「物質世界」の現状把握(金融の場合)
金融の世界では1980年代頃から、デリバティブという取引の手法が大きく導入されてきました。
本来はリスクを回避するための取引手法として導入されたと思うのですが、実際にはレバレッジといって、手元資金の何倍もの取引を出来る仕組みになっており、ヘッジファンドなどの荒稼ぎの手法等によりとんでもない手法として利用されてきました。
例えば、1億円しか資金が無いのに、100億円の金融商品を取引できたら、博打的な取引が出来るのです。現在の世界金融市場は、そうした手法を常識的に受け入れた上で、果てしなく上昇してきているということを頭に入れておいてください。
現在の金融システムは、2006年頃から表面化しだした「サブプライムローン問題」によって、実質的に破綻してしまったのです。
この時点で、金融システムは正常な回復不能な状態にまでのダメージを受けてしまったんですね。
もうこの時点ではすでに手の施しようがなかったため、とにかく無制限とも思える公的資金の投入により、金融機関の損失を国の借金で救済したのです。
これにより、現在でも金融システムはそれなりに機能してはいるのですが、それで解決とはなっていないのです。
こうして金融機関の危機は、国の財政危機に置き換わりました。
しかし、それは日本に限ったことではなく、欧米でも同じ状況に陥っているのです。
そうして、世界経済が停滞を続ける中で、各国の株価は史上最高値を更新し続け、欧米や中国等では不動産価格が高騰してきたのです。
しかし、そこで儲ける者は本当にごく一部の大金持ち達で、私たち庶民は実体経済の停滞で苦しむばかりです。そうした資産のアンバランス(富める者は益々富み、貧しき者は益々貧する)により、実体経済の消費は落ち込み、この夏から世界各国で経済の更なる減速が鮮明になりはじめました。
株価は有り余る資金と、楽観的な景気回復見込みによって史上最高値を更新し続けてきたのですが、それは有り余るお金の運用に正当な理由をつけるためのものであり、実体経済は停滞を続ける中でいよいよその底割れが現実のものとして示され始めたのです。
金融機関の損失を国が肩代わりし、国の借金を中央銀行が肩代わりをして、世界はこの8年ほどを何とか生きながらえて来ました。
しかし、どんなに資金を投入しても、資産配分のアンバランスにより消費を支えている国民に上手にお金が行き渡っていないために、実体経済が長い低迷の果てにいよいよ底割れをはじめたのです。
実体経済の反映となる株価は、今なお多くの国で史上最高値付近にあるのです。
大きく膨らんだバブルは、今はただその破裂のときを待つばかりです。
こうしてはじまる旧システムの崩壊が、新しい調和的なシステムを世に産み落とす切っ掛けとなります。これから始まる混乱も、生みの苦しみとしての意味がキチンとあるんですね。